製品企画で陥りやすい3つの問題

標準

今回はちょっと真面目な話です。また、評論家的な話かなとも思いますが、思うままに…

私はハードウェアベンダーではないので直接今この問題に直面している訳ではありませんが、歴史を見ると次には我々SIerにも来るのかなと懸念をしています。

テクノロジーの進歩に引っ張られ、また今ではIT業界においてはスタンダードを取る事が勝ち組になる近道ということもあり、熾烈な新製品競争が繰り広げられています。

私の感じた今の新製品のあり方の問題点3点についてです。評論家みたいな話になってしまいますが、自分に対するメッセージも含めてまとめてみました。

1.スペック勝負

特に後発商品の場合にはどうしても競争優位性を出すためにスペック優位性を前面に出した商品になってしまいます。競合相手より10g軽い、3mm薄い、メモリーが1GB多い、CPUが速い、USBポートが2つ多い、立ち上がりが3秒速い、など大体の商品はこういったスペック勝負だと思います。

テクノロジーがニーズに追い付いていなくて遅かったり重かったりするけれど我慢していた創世記にはこういう技術競争を前面に出した製品計画も有かなと思いますが、オーバーシューティング現象の今は訴求ポイントは別のところにすべきかなと思います。

私の子供の時代には自動車の宣伝文句は常にエンジンの馬力だとか、0-400mの速さだとかが前面に出ていました。我々も、ちょっとでも馬力の高い自動車にあこがれたものです。しかし、昨今どの車種が何馬力なのかなんて誰も知らないし、興味もないですよね。これは自動車マーケット自体が成熟して、性能優位性から乗りやすさとか快適とかに移ってきているからだと思います。(最近はエコ関係でまたスペック勝負的な雰囲気はありますが)

我々の業界もそろそろスペック優位性を前面に出す時代は終わりではないでしょうかね。(もちろんそういう商品も出てきていますが)

2.差別化戦略

他社には無い何かを持つことにより優位性を出す。当然のアプローチだとも思います。

他社製品にはあって、自社製品には無いというものを追加してもそれは追従しているだけであって、優位性は出せない。その機能もユーザにとって必要な物であれば足さなければ「良い製品」にはなれないわけですが、やはり競争優位性を考えると、それによりは「他社にない機能」の付加を優先させる、あるいは、他社とは全く違うコンセプト商品を出して同じ土俵に乗らないようにする。

正しいアプローチの様な気もしますが、いつかマーケット(利用者)の存在が消えてしまう気がします。戦うべき相手との戦略重視で、マーケットや利用者の混乱に対する配慮が過少化してしまうのではないでしょうか。古くはベータとVHS、最近ではハイビジョン、インターネット放送、電子書籍などスタンダード争奪戦も同類の問題を秘めていると思います。

3.パラダイム延命商品

個人的には一番根が深いのはこれかなと思います。

特にIT業界では今、4番目の大きな波が来ており、ドラスティックなパラダイムシフトが起きつつあります。

こういう時期には技術革新も大いに重要ですが、使う側も考え方を今までの延長ではなく、ガラッと変えなければならず、この普及・定着のスピードが勝負となります。

勇気があり、クリエイティブな企業は新しいパラダイムを訴求するようなパブリシティーを行い、率先してパラダイムシフトをリードしながら商品を世に出して行きます。

しかし、比較的多いのは、「革新的な技術を今まで通りの使い方で使える」事を売りにしている商品です。たとえば、IP電話(最近ははやり言葉のせいか、IPセントレックス電話もVaaS(Voice as a Serviceと呼ばれたりしているそうですが)というのは今までの「アナログ音声で、独立したシステム」で行っていたものから比べると、他システムとの融合など、大きな可能性を秘めています。しかし、多くみられるのはIP-PBXの様に、テクノロジーはIP技術を使っているけれども、「使い方は今までのPBXと全く同じように使えますよ」というのを売りにしているものが多いような気がします。ソフトウェアの世界での技術的な話になってしまいますが、オブジェクト指向という概念を従来のサブルーチンの様に使えますなどとオブラートに包んでしまっているのも、設計者のパラダイムシフトを阻害していると言わざるを得ません。

マーケティングをするとおそらく、少なからぬ(マジョリティーと呼んでも良いくらいのボリュームかもしれませんが)マーケットニーズが上記のようなニーズだという事になってしまうし、利用者も受け容れ易いのである量は売れてしまうのでさらに性質が悪いかなと思います。

しかし、私は、これはパラダイム延命商品と呼び、パラダイムシフトが起きる事を阻害している、あるいは遅くしている効果しか無い商品だと思います。

新しい物を出し、新しい使い方を提案する商品を出すことは勇気がいるし、時間、根気、コストがかかる事だと思いますが、流れを読み、正しいアプローチをする企業でありたいと思います。

ちょっと理屈っぽくて長文になってしまいました。すみません。

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